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近年、賃貸マンションやアパートのオーナーによる自主管理が注目される一方で、入居者からはその管理方法に対して不満が多く、嫌われることも少なくありません。
賃貸マンションの自主管理とは、管理会社を通さずにオーナー自身が物件の管理を行う方法を指します。
これには一定のメリットもある一方で、入居者の視点からは多くの問題が浮かび上がります。
では、なぜ賃貸マンションの自主管理が嫌われるのでしょうか。
賃貸マンションの管理業務には、日常的な設備のメンテナンスや修理、入居者からのクレーム対応、契約書の更新手続きなど多岐にわたる業務が含まれます。
自主管理の場合、オーナーが全てを一人で担当するため、どうしても対応が遅れがちになります。
特に修理や設備の故障に関して、オーナーが忙しくてすぐに対応できないことがしばしばあります。
管理会社が介入している場合、専門スタッフが迅速に対応してくれることが多いため、入居者にとっては自主管理の遅れがストレスとなるのです。
「うちは大丈夫」と思っているオーナー様もいると思いますが、そう上手く行かない理由が明確にあります。
特にコロナ禍以降は、半導体不足により給湯器、エアコンなどの生活必需品が入手できない現象が全国で発生しました。
設備不足により新築物件の引き渡し時期が不明になり全国的に大問題になりました。
今では供給が安定してきたものの、今度は物価高騰の波があり、中々設備交換を躊躇するオーナーが多くなりました。
その点、不動産管理会社は給湯器やエアコンなどの超重要家電については年間契約、大量工事契約を結び、安定した価格で供給する仕組みを確立していることが多いです。
PDFの28ページ目以降に減額事例が記載されてます。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001399558.pdf
自主管理の物件では、オーナーと入居者のコミュニケーションが十分でないことがよくあります。
管理会社が介入することで、定期的なチェックや情報提供が行われることが一般的ですが、自主管理ではそれが欠けがちです。問題が発生しない限りオーナーが入居者と直接連絡を取ることが少ないためです。
普段からのコミュニケーションが多くても少なくても、トラブルが発生した際にオーナーへ連絡を取りづらいと感じる入居者も多く、これが不満の原因となることが少なくありません。
頻繁に入居者と連絡を取るオーナー様は年々減少しております。
これは、昨今の特殊詐欺事件、訪問販売、強盗などの凶悪犯罪の増加が背景にあると感じます。
古き良き近隣付き合いは昔の話しです。私は良い大家だ、というのは自分だけなのかもしれませんね。
自主管理の場合、オーナーが管理業務に必要な知識や経験を持っていないことが少ないです。
これは、年々、不動産業者が取り扱うべき条例や法律が増えているからです。我々専門家でも日々の知識アップデートが大変です。
専門的な知識が不足していると、入居者が期待する品質の管理が行えないことがあります。
たとえば、建物の老朽化に対する適切なメンテナンスが行われていなかったり、契約更新手続きが不適切だったりする場合、入居者は不安を感じます。
また、オーナーが途中で管理業務を放置することもあるため、安定した住環境が維持されないことが懸念されます。
また、オーナーの相続による世代交代で、何もしないオーナーになった、なんて話しはよく聞きます。
その点、管理会社は担当が変わってもサービス内容がかわりません。
管理に担当者の対応に不満があっても交代することができますが、自主管理の場合は交代する人がいません。
自主管理をしているオーナーの中には、感情的な反応を示すことがあるため、入居者との関係が悪化することがあります。
特に、クレーム対応においてオーナーが感情的に反応してしまうと、入居者は冷静な対応を期待できず、事態が悪化することがあります。
管理会社を通じて対応する場合は、プロフェッショナルなスタッフが中立的な立場で問題を解決してくれるため、入居者にとってはより安心感があります。
自主管理ではその点が欠けているため、感情的なトラブルが発生することがよくあります。
対応の仕方に困ったオーナーが、お客さんを仲介した不動産会社へ相談する場面がよくありますが、自主管理の場合は仲介した不動産会社は簡単なアドバイスはするものの、対応は絶対にしません。
なぜならば、不動産会社が対応するのは管理契約をしているからです。
無償で対応すれば現在管理契約をしているオーナー様に対して失礼だからです。自主管理はそういった点を含め「借りる側」も検討をすべきなのです。
賃貸マンションの管理には、法的な知識や税務、建物の保守管理に関する専門的なサポートが求められます。
自主管理では、オーナーがこれらの知識を十分に持っていないことがあり、その結果、入居者が被害を受ける可能性があります。
例えば、法的な規定を無視した契約や、税務申告を怠ったために入居者が不利益を被るといったケースです。
管理会社を通じている場合は、これらのリスクを回避することができるため、入居者にとっては安心感が大きいのです。
自主管理の最大の魅力は、管理会社に支払う費用が不要である点ですが、入居者から見ると、それが逆に問題になることもあります。
管理会社に依頼している場合、少なくともオーナーはプロフェッショナルなサポートを受けることができます。
しかし、自主管理ではオーナー自身がその全てをこなさなければならず、場合によっては費用を節約するあまり、必要な対応が行き届かないことがあります。
この点で、入居者にとっては費用対効果が薄いと感じられることがあります。
サービスが不十分であれば入居者は退去をします。オーナーの対応が悪ければ、そのような悪評は不動産会社ではすぐに話しがまわってきます。
やはり、契約いただいているオーナー様を優先しますし、感じが良いオーナー様を紹介したくなるのは普通の事ですよね。
賃貸マンションの自主管理には、確かにオーナーにとってのコスト削減というメリットがありますが、入居者にとっては多くの不安要素が存在します。
管理の遅れや不十分な対応、コミュニケーションの不足、専門的な知識の欠如など、これらが積み重なることで、入居者の不満を招くことが多くなります。
オーナーが自主管理を行う場合には、入居者との信頼関係を築くために、迅速かつ適切な対応を心掛け、専門的な知識を深めることが求められます。
それが、入居者の満足度を高め、結果的に物件の価値を維持するためにも重要なポイントとなるでしょう。
日本における賃貸物件の自主管理の全国比率は、正確な数字を出すのが難しいですが、一般的な推計としては、賃貸物件全体のうち、自主管理を行っている物件の割合は約30%程度と言われています。
この割合は、地域やオーナーの規模、物件の種類によって異なるため、詳細な数値は様々ですが、以下のような要因が影響しています。
小規模な個人オーナーは自主管理を選択することが多い一方で、大規模な賃貸物件やマンションは管理会社に委託する割合が高くなります。
都市部では管理会社を通じた賃貸管理が一般的ですが、地方では自主管理を選ぶオーナーが比較的多い傾向にあります。
一戸建てや小規模なアパートでは、自主管理を選ぶオーナーが多いのに対し、大規模マンションやビルでは管理会社に委託することが一般的です。